プロが聴く新井和輝 / King Gnuのベースプレイ|サウンドの秘密(使用機材)と神フレーズ集

King Gnuのどっしりとした低音と、ジャズの香りがするしなやかなグルーヴ。その中心にいるのがベーシスト新井和輝です。ジャズビッグバンド仕込みのリズム感と、5弦ベースを駆使したレンジの広さで、バンドのサウンドを“上質なポップス”へと押し上げる存在。その魅力をベーシスト目線で掘り下げます。

ベーシスト新井和輝のプロフィール|生い立ちと経歴

新井和輝(あらい かずき)は東京都福生市生まれ。米軍基地のある街で育ち、幼少期から母親の影響でブラックミュージックやジャズに触れながら音楽的な感性を養っていきました。14歳のときに友人に誘われてエレキベースを始め、高校では軽音楽部に所属しつつジャズにものめり込んでいきます。

本格的にベースを学ぶため、日野“JINO”賢二や河上修といった第一線のジャズベーシストに師事。大学時代には国立音楽大学公認ビッグバンド「NEWTIDE JAZZ ORCHESTRA」に参加し、日本最大級のコンテスト「山野ビッグバンド・ジャズコンテスト」で最優秀賞を受賞するなど、学生の頃から高い演奏力を証明してきました。

大学卒業後、同世代の仲間とセッションやバンド活動を重ねる中で常田大希と出会い、のちのKing Gnuにつながるバンドに参加。黒木華主演ドラマ『イノセンス』主題歌「白日」のヒットを機にバンドは全国的な人気を獲得し、新井も“歌えるベース”と“圧倒的なライブのノリ”で注目されるようになります。

2021年にはFenderとエンドースメント契約を結び、自身のプレイスタイルを反映したシグネチャーモデル「Deluxe Jazz Bass V Kazuki Arai Edition」を発表。2023年には改良版の2代目モデルも登場し、国内外のベーシストから注目を集めています。プライベートでは2022年に結婚、2024年には第一子誕生を報告するなど、公私ともに充実した時期を迎えています。

新井和輝のベースプレイ分析|プレイスタイルとベースラインの特徴

ジャズ由来の高度な音楽性と、ロックバンドならではの荒々しさ。その両方を自然に同居させているのが新井和輝のベースです。テクニカルでありながら決して“やりすぎない”、アンサンブルを最優先したプレイスタイルは、コピーするとその奥深さに驚かされます。

ジャズ仕込みのグルーヴとコード感

ビッグバンド出身らしく、ドラムとのコンビネーションやコード感の出し方にジャズの素養が色濃く表れています。ルートと5度だけで終わらせず、3度・7度・9thといったテンションノートをさりげなく織り交ぜることで、コード進行の流れをベースだけでも感じさせるラインを構築。

とはいえジャズベースのように常に歩き回るわけではなく、ロック/ポップスとしての聴きやすさを保ちながら、要所でウォーキング風のフレーズやクロマチックなアプローチを挟むバランス感覚が秀逸です。グルーヴ面では、拍の“裏”を強く意識したノリでバンド全体をドライブさせており、特に16分音符の置き方に新井らしさが凝縮されています。

5弦ベースを活かしたレンジの広さと表現力

新井のもう一つの特徴は、5弦ジャズベースを完全に“自分の楽器”として使いこなしている点です。低音側のB弦は単にボトムを足すだけでなく、ブレイクでのインパクトや、サビ頭の「ドンッ」と落とす一発など、アレンジ上のエフェクト的な使い方も多用。

同時に高音弦側では、ギターやキーボードと絡み合うようなメロディアスなフレーズも多く、ソロに近いパートではジャズ的なアドリブ感を覗かせます。低音から高音までをひとつながりの“歌うレンジ”として扱っているため、コピーするときはポジション移動の滑らかさや左手の運指にも注目したいところです。

新井和輝のベースが光る代表曲・名演紹介

King Gnuの楽曲はどれもベースが重要な役割を担っていますが、その中でも「新井節」が特に際立つ曲をいくつかピックアップします。公式YouTubeチャンネルにMVやライブ映像が公開されているので、記事内ではぜひ埋め込みを活用しながらベースラインをチェックしてみてください。

「白日」

King Gnuを一躍有名にした代表曲。ピアノ主体のサウンドの中で、ベースが“もう一本のメロディ”として機能している好例です。Aメロでは抑えたフレーズで歌に寄り添い、サビではウォーキングベースの要素を取り入れながら縦横無尽に動き回ります。

それでいて決してうるさくならず、曲のドラマ性を増幅する方向にしっかりとコントロールされているのが新井らしいポイント。ニュアンスまでコピーできると、一気にプレイの幅が広がる1曲です。

「Teenager Forever」

明るいメジャー感と疾走感が魅力のロックチューン。イントロから続くリフはシンプルながら、微妙なハネ具合や音の長さの調整でグルーヴが大きく変わる“職人フレーズ”です。

サビ後半にかけてテンポ感が増していく中でも、ベースはブレずにバンドを牽引。重低音でオーディエンスを“ぶん殴る”ような迫力と、ポップスとしてのキャッチーさが同居した名演と言えます。

「Vinyl」

ファンク色の強いグルーヴチューンで、新井のベースが思いきり暴れ回る1曲。イントロのミュート気味のリフから、サビでのパーカッシブなアタックまで、右手のタッチコントロールが光ります。

ミュート、ゴーストノート、スライド、時折見せるスラップ的アタックなど、ファンク〜R&B系のエッセンスを詰め込んだプレイは、コピーすると非常に勉強になる内容。シグネチャーベースのキャラクターもよく伝わる楽曲です。

「飛行艇」

6/8拍子のリズムと重厚なサウンドが特徴のナンバー。分厚いシンセベースの上に、エレキベースがソロ的な役割で絡んでくる構成になっており、後半のベースフレーズはライブで大きな見せ場となっています。

オクターブ奏法やスライドを駆使しながら、変拍子にも近いビートの中でしっかりと芯をキープしている点は、リズム感と体力の両方が試されるプレイ。中上級者のコピー課題にぴったりです。

新井和輝の使用ベース・機材一覧|音作りとセッティング

新井和輝のサウンドは、「5弦ジャズベース+ハイパワーなベースアンプ+現代的なプリアンプ/エフェクター」の組み合わせが核になっています。それぞれの機材がどんな役割を持っているのかを知ると、自分の環境でも“新井っぽい音”に近づけやすくなります。

ベース本体|5弦ジャズベースを軸にしたメイン楽器

メインで使用しているのは、フェンダーの5弦ジャズベース。2016年頃から長く愛用してきたのが、アクティブ回路を搭載した「American Deluxe Jazz Bass V」で、アッシュボディとディンキーシェイプの取り回しの良さが特徴です。

このアメデラの仕様をベースに開発されたのが、Fenderとのコラボによるシグネチャーモデル「Deluxe Jazz Bass V Kazuki Arai Edition」。5連ペグのヘッド形状やアクティブ/パッシブ切り替え、トーンコントロールの効き方など、新井のプレイスタイルを前提にチューニングされた仕様になっており、現在のライブやMVではブラックとビンテージブロンドの2色がよく確認できます。

ほかにも、国産限定の「MIJ Limited Deluxe JBV」(復刻アメデラ)や、初期にはレッドカラーのアメデラ5弦を使用。4弦ではAmerican Professional II Jazz Bass(Mystic Surf Green)や1966年製ジャズベース、カスタムショップ製’66 JBなどもリハーサルやサポート現場で弾いており、シチュエーションに応じて5弦/4弦を使い分けています。

アンプ・キャビネット|Aguilar DB751とDB410×2の鉄板セット

ライブの中核を担うのが、真空管プリアンプを備えたAguilarのベースヘッド「DB751」です。クリーンでも太く、軽くドライブさせても心地よいコンプレッションがかかるのが特徴で、5弦の低域をしっかり鳴らしつつ、ミドルの存在感も失わないサウンドを作ることができます。

キャビネットは同じくAguilarのDB410(4×10インチ)を2台スタックする構成が基本。700Wクラスの大出力で、フェスやアリーナクラスの会場でも十分な音圧を確保しつつ、レスポンスの速いタイトなローエンドを維持できる組み合わせです。過去にはAmpeg SVT-2 PROやDemeter BASS 800、Sunn 300Tなども現場に応じて使用しており、真空管ヘッド特有の“押し出し感”を重視した選択をしていることがうかがえます。

エフェクター・プリアンプ|現代的ベースボードの中枢

新井のペダルボードは、ベース用プリアンプとコンパクトエフェクターを組み合わせた実戦的な構成です。代表的な機種と「何をするためのものか」を整理すると次の通りです。

・Xotic Bass BB Preamp(ベースBBプリamp)
 ベース用のオーバードライブ/ブースター。軽い歪み~中程度のドライブを付加し、音量と太さを少し持ち上げる用途で使われます。常時うっすらかけて“鳴り”を良くしたり、サビでの存在感アップに使うタイプのペダルです。

・Tech21 SansAmp Bass Driver DI(各種モデル)
 ベース用プリアンプ兼DI。アンプシミュレーターとして、真空管アンプ風の質感やスピーカーの鳴りをライン出力に再現するために使われます。PA卓に直接送る際の音作りや、レコーディングでの“アンプの代わり”として活躍する定番機です。

・Subdecay Proteus MkII(エンベロープフィルター)
 ベースの入力信号に応じてフルートのようなフィルターの開閉を自動で行うエンベロープフィルター。いわゆる“オートワウ”“シンセっぽいベース”を作るペダルで、ファンクなフレーズやエレクトロ寄りの楽曲で、動きのあるサウンドを生み出すために使用されます。

・MXRオクターバー/Boss OC-2・OC-3(オクターブ)
 原音より1オクターブ下(場合によっては2オクターブ下)の音を足して、より厚みのある低音を作るエフェクター。リフに迫力を出したいときや、シンセベース的な重低音を足したい場面で活躍します。

・Boss SYB-5 Bass Synthesizer(ベースシンセ)
 ベース用のシンセサイザー・ペダル。フィルター、オシレーター、LFOなどを組み合わせたシンセサウンドを、ベースで弾いたフレーズに追従させることができます。エレクトロ寄りの曲や特殊なイントロで、“生ベースなのにシンセっぽい音”を出したいときに便利な1台です。

・KORG Pitchblack(チューナー)
 ステージでのチューニング確認に使うペダル型チューナー。ミュートスイッチも兼ねるため、曲間の静かな調整が可能になります。

これらを組み合わせることで、クリーン~ドライブ~シンセ的サウンドまで、King Gnuの多彩な楽曲に対応できる柔軟なシステムを構築しています。

その他アクセサリ・セッティングのこだわり

弦やピック、ケーブルについて具体的な型番は公表されていませんが、ハイエンドな5弦ベースのポテンシャルを引き出すため、ロングスケールに適したラウンドワウンド弦や、ノイズの少ない高品質なシールドケーブルを選んでいるとみられます。

プレイスタイルとしては指弾きが基軸で、必要に応じてピックやスラップ気味のタッチを使い分けるタイプ。右手のポジション(ブリッジ寄り/ネック寄り)で音色をコントロールしつつ、アクティブ回路のEQで細かく味付けすることで、楽曲ごとに最適なトーンを作り上げています。

新井和輝の魅力まとめ|ベースをコピーするときのポイント

新井和輝のフレーズをコピーするときは、「音の多さ」よりも「ノリとコード感」を重視するのがコツです。

・まずはルートと基本的なフィルだけをしっかり弾き、原曲と同じグルーヴで鳴らせるか確認する
・慣れてきたら、クロマチックやウォーキング的な動きを少しずつ加えていく
・ドラムのキックとスネアに対して、ベースがどこで同時に鳴っているか/外しているかをよく聴く
・5弦の低音は“出しっぱなし”にせず、ここぞという場所で効果的に使う

このあたりを意識して練習を進めると、King Gnuのコピーだけでなく、ジャズ~ソウル~ロックをまたいだ“現代的ベースプレイ”の感覚が自然と身についてきます。単なるテクニック自慢ではない、「バンドの音楽をかっこよくするためのベース」を体現しているプレイヤーとして、ぜひじっくり研究してみてください。

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