プロが聴く亀田誠治のベースプレイ|サウンドの秘密(使用機材)と神フレーズ集

プロデューサーとしてのヒット実績と、ベーシストとしての歌心あふれるフレーズセンス。その両方を高い次元で兼ね備えたミュージシャンが亀田誠治です。椎名林檎、東京事変、スピッツ、平井堅、JUJUなど数々の名曲の「屋台骨」を支え続けてきた彼のベースプレイを、ベーシスト目線で掘り下げていきます。

ベーシスト亀田誠治のプロフィール|生い立ちと経歴

亀田誠治は1964年6月3日生まれ、ニューヨーク出身の音楽プロデューサー・編曲家・ベーシストです。幼少期をアメリカで過ごしたのち日本に帰国し、大阪・東京で育ちました。中学2年生の頃にベースと出会い、ロックやポップスをコピーしながら腕を磨いていきます。

早稲田大学在学中から音楽活動を本格化させ、卒業後の1989年頃よりプロベーシスト/アレンジャーとしてのキャリアをスタート。転機となったのは、椎名林檎のデビュー作『無罪モラトリアム』や『勝訴ストリップ』への参加です。アレンジとベース演奏の両方で深く関わり、作品は連続してミリオンセラーを記録。これをきっかけに、スピッツ、平井堅、JUJUなど、ジャンルを超えたアーティストからオファーが殺到するようになります。

2004年には椎名林檎らとともにバンド「東京事変」を結成し、メンバー名「亀田誠治」としてベーシスト兼コンポーザーとして活動。ロックバンドの一員としてステージに立ちながら、その裏側ではプロデューサー/編曲家として作品をプロデュースし、日本レコード大賞編曲賞を複数回受賞するなど、日本のポップス/ロックシーンを支えるキーパーソンとなりました。

現在もスタジオワーク、ライブサポート、テレビ・ラジオ出演、イベント企画などその活動は多岐にわたり、「日本でもっとも多忙なベーシスト兼プロデューサー」の一人と言ってよい存在です。

亀田誠治のベースプレイ分析|プレイスタイルとベースラインの特徴

派手なテクニックを見せつけるタイプではないものの、「曲がよく聴こえるベース」を最優先に考えた、職人的プレイスタイルが亀田誠治の持ち味です。プロデューサー目線でアレンジ全体を見渡しながら、必要なところにだけ必要な音を置いていく——そんな“引き算”の美学が、彼のグルーヴを支えています。

歌メロを支えるメロディアスなライン

亀田誠治のベースラインは、単にルートを追うだけでなく、歌メロの補助線のように動くメロディアスさが特徴です。とはいえ目立ちすぎることはなく、「ここぞ」という場所でだけ上昇フレーズや経過音を挟み、サビの高まりやコードの切り替わりを自然に導いていきます。

例えばバラード系では、ロングトーンと短いフィルを丁寧に配置し、ボーカルのフレーズとぶつからないように配慮しながらも、ベース単体で聴いても成立する“歌うライン”を構築。8分・16分の刻み方ひとつにもニュアンスが宿っているので、コピーする際はリズムの位置と伸ばし方に注目すると学びが多いプレイです。

プロデューサー目線の「曲優先」グルーヴ

もう一つの大きな特徴は、「曲が気持ちよく聴こえること」を最優先したグルーヴ設計です。自身が編曲やサウンドプロデュースも手がけることから、ドラム、ギター、鍵盤、ストリングスなど全パートのバランスを踏まえたうえで、ベースのポジションを決めています。

そのため、ロック曲ではタイトに硬く、ポップスやR&B寄りの曲では丸みのあるサウンドとレイドバックしたノリなど、楽曲ごとにアタック感やリズムの「前ノリ/後ノリ」を変えているのもポイント。

テクニック的にはピック弾きが中心ですが、楽曲によっては指弾きやニュアンス重視のアプローチも取り入れ、音数を減らしてローエンドの安定感を出す場面も多く見られます。

ポップセンスとコード感のあるフレーズ作り

作曲・編曲家としての顔を持つだけあり、コードトーンやテンションノートを織り交ぜたフレーズ作りも亀田誠治の魅力です。単純なルート+5度だけでなく、3度・6度・9th的な音をさりげなく入れることで、コードチェンジのニュアンスを先取りしたり、メロディの裏で別のラインを形成したりしています。

それでいて、「ベースだけが難解になる」ようなことはせず、あくまでポップスとして聴きやすいラインに落とし込んでいるのがプロのバランス感覚。耳コピしてみると、理論的にもすごく勉強になるプレイヤーです。

亀田誠治のベースが光る代表曲・名演紹介

ここからは、公式音源やMVで亀田誠治のベースが特に映える楽曲をピックアップします。東京事変・椎名林檎作品に加え、プロデュースやアレンジで関わった他アーティストのヒット曲にも注目すると、サウンドの“色使い”の違いが見えてきます。

東京事変「キラーチューン」

跳ねるような16分の刻みと、サビでの伸びやかなルートワークが気持ちよいロックナンバー。Aメロではリズム隊が前のめりにグイグイ押し出し、サビではコード感のあるフレーズで広がりを演出しています。攻めたアレンジの中で、ベースがしっかりと曲を牽引している好例です。

東京事変「OSCA」

変則的なリズムとコード進行の中で、ベースが強烈な存在感を放つ楽曲。リフ的なフレーズと歌の絡み方、ブレイクでの抜き/入りのタイミングなど、アレンジと一体になったベースプレイが堪能できます。海外のベーシストからも「OSCAの亀田のプレイは必聴」と評価されている一曲です。

椎名林檎「本能」

重心の低いビートの上でうねるように動くベースラインが特徴的なナンバー。サビでのルート中心の押し出しと、Aメロ・Bメロでの隙間を生かしたフレーズの対比が秀逸で、「少ない音数で曲を支える」亀田スタイルのお手本のような楽曲です。

平井堅「POP STAR」

明るくポップなダンスチューンの中で、ベースが軽快なノリと低音の安定感を両立させています。サビに向けて少しずつ音数とノリを押し上げていく構成は、歌ものポップスにおけるベースの役割を学ぶのにぴったり。リズムの「揺れ方」に注目してコピーしたい1曲です。

JUJU「やさしさで溢れるように」

バラードならではの余白を生かした、丁寧なベースワークが光る楽曲。音数は決して多くないものの、サビ前の半音上行やコードトーンの選び方が絶妙で、歌の感情の高まりをそっと後押ししています。ボーカルとぶつからないラインの作り方という意味で、非常に勉強になる1曲です。

亀田誠治の使用ベース・機材一覧|音作りとセッティング

長いキャリアの中で数多くの楽器・機材を使ってきた亀田誠治ですが、その根底には「歌ものを気持ちよく聴かせるための音作り」という一貫した哲学があります。ここでは年代ごとの代表的な機材と、その役割を整理してみましょう。

ベース本体|フェンダーJBとヤマハBBを軸にしたサウンド

学生時代から現在に至るまでのメインは、1966年製フェンダー・ジャズベース。本人が「本妻」と呼ぶほどの愛器で、太くて抜ける中低域と、歌ものに合うしなやかなレスポンスが特徴です。その前にはヤマハBB2000を使用しており、後にフレットレス加工して別のキャラクターの楽器として使い続けています。

2000年代以降は、1974年製フェンダー・ムスタングやヤマハBB5000(5弦)なども場面に応じて使用しつつ、2012年には自身のシグネイチャーモデル「YAMAHA BB2024SK」が限定発売。自ら設計に関わったこのモデルは、ピック弾きでのタイトなロックサウンドと、歌ものに合うサスティンを両立できる仕様になっており、ステージでもレコーディングでも活躍しています。

アンプ/キャビネット|AmpegとYAMAHAアンプの使い分け

90年代〜2000年代初頭までは、レコーディングでAmpeg B-15Rコンボ・アンプをメインに使用。B-15Rは真空管回路による温かくマイルドなサウンドが特徴で、スタジオ定番のベースアンプとして知られています。

大規模なライブやホール公演では、より大出力のAmpeg SVT-CLやSVT-AVなどを追加し、8×10インチキャビネットと組み合わせて、ステージ上でもしっかりと低音を届けるセッティングに。これらのアンプは、ロック寄りの現場で「存在感のあるロー」を作るための土台となっています。

近年は、自宅や小規模セッション向けにYAMAHA THR10といった小型モデリングアンプも使用。ヘッドホン練習やプリプロ段階で、実際の現場に近いサウンドイメージを確認するための“デスクトップアンプ”として活躍しています。

エフェクター|歪み・プリアンプ・コンプを軸にした音作り

歪み系の「顔」として知られているのが、Roger MayerのVooDoo Bassシリーズです。ベース専用ディストーションで、ミドルに特徴のある歪みを加えることで、ロックな存在感を出しつつローエンドを失いにくい設計になっています。白い筐体のVooDoo Bass KAMEDA Classicは本人のシグネイチャーモデルで、2000年代以降のライブやレコーディングで長く使われています。

また、Boss ST-2などのローゲイン〜ミドルゲインのオーバードライブも併用し、曲によって「少しだけ前に出す」レベルの歪みを調整。Providence DBS-1オーバードライブやXotic EP Booster、Providenceの最終ブースターなどもボードに入れており、これらは音量・質感を微調整するためのブースター/トーンシェイプとして使われます。

コンプレッサーやプリアンプとしては、Boss BB-1X Bass Driverを使用。BB-1Xはベース用のプリアンプ/DIで、原音を損なわずにアタック感と輪郭を強化できるペダルです。これらを組み合わせることで、「歌ものでも埋もれないローエンド」と「ロックでも抜ける中高域」を両立させたサウンドを作っています。

弦・ピック・ケーブルなど周辺アクセサリ

細かなアクセサリ類にもこだわりがあり、弦はダダリオEXL170を長年使用。ニッケルラウンド弦ならではのバランスの取れたトーンで、レコーディングでもライブでも扱いやすい定番セットです。

ピックはフェンダー346ミディアム(約0.73mm)を愛用。涙型より大きい三角形のピックで、安定したグリップとアタックのコントロールのしやすさが特徴です。ケーブルはMonster Performer 500をシールドに、Providence P203をパッチケーブルに使用し、信号ロスを抑えつつノイズを低減したプロ仕様のセッティングになっています。

パワーサプライにはVoodoo Lab PP2 Plusを採用し、複数のペダルに安定した電源を供給。こういった“足回り”の徹底が、長時間のステージや大型ツアーでも安定したサウンドを維持する土台となっています。

亀田誠治の魅力まとめ|ベースをコピーするときのポイント

亀田誠治のベースは、一見派手ではないものの、コピーしてみると「曲の聴こえ方」がいかに計算されているかがよく分かります。

・まずはルート中心の骨格を押さえ、余裕が出てきたらフィルや経過音を足していく
・ドラムとの関係(どこで一緒に鳴っているか/わざと外しているか)を意識して聴く
・サビとAメロでの音数とノリの違いに注目し、「盛り上げ方」の設計を真似する
・歪みやコンプをかけすぎず、「歌が聴きやすいベーストーン」を意識する

このあたりを意識してコピーしていくと、フレーズ力だけでなく、アレンジやサウンドメイクの視点も一緒に鍛えられます。プロデューサー目線でプレイするベーシストの代表例として、じっくり研究したい存在です。

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